社会派ベタ記事

朝日新聞を読んで馬脚という言葉を思い出す。

馬脚をあらわしたのは4月9日の夕刊15面のベタ記事。新聞の顔である社説でなくて、あまり注意がおよばないベタ記事に真の姿というものは表れるのだなあとつくづく実感する。

問題の記事はDV事件の短い報道である。年上の夫が年下の妻にDVしていたので、裁判所から保護命令(多分接近禁止命令)を受けた。こういう場合は、妻の現住所が夫に分からないようにしてある。訪ねられてまた暴力振るわれたり脅迫されたりしたら元の木阿弥だからである。この事件もそういうふうにして解決の方向に向かっていたのだが、それでも妻の居場所をどうしても知りたかった夫が、妻の職場に行って現住所を聞き出そうとしたらしい。保護命令違反である。

こういう事件はよくあるので、再発防止のために、起きればそのつど新聞に載せ、DVはやったら逮捕されて前歴がつくんだぞ、と脅すぐらいしてもいい。それくらいの対処をしないと、保護命令違反もなくならないし、DV自体もなくならない。まずは、DV=犯罪という認識を広めるのが新聞の役目。誰にでも分かることである。

でも、朝日新聞はDVが殺人事件に発展するとかまでいかないと通常はDV関連ニュースを載せない。ところが、今回よくあるDV事件が取り上げられたのである。何故か。

それは今回の事件の妻が夫より52歳年下だったからである。

記事の見出しは「52歳年下の妻にDV容疑で逮捕。」記事のなかで、夫76歳、妻24歳、と正確を記すぐらい年の差に読者の関心を引っ張る。76歳と24歳が結婚?いくら年齢差があったって関係ないのかもしれないが、実感として、妻が生まれたとき夫はすでに52歳だなんて頭がくらくらする・・・。と、これでは、誰が読んだって、下世話な想像しかしないではないか。DVの底なしの怖さなんか忘れてしまって。

わたしもつい、あらぬ想像をしてしまったが、下品なので、ここには書きたくない。自分を棚にあげて言うのもなんだが、書いた記者も下世話な想像をしていたのだろうと思う。これで読者を釣れるという余計な計算も働いていたと思う。社会派ベタ記事で一旗あげて、次は署名記事を書きたいとか。そして、こういった下品なやり方を見過ごしたデスクもまた下品。この不快はしばらく消えない。