飲料コマーシャルの不思議

飲料コマーシャルと言えば缶コーヒーと缶ビール。コマーシャルの種類、量、どちらも他の商品より抜きん出ている。価格帯が同じということがあるのだろうか、各社しのぎを削っている。

CMたくさん作れるくらい儲けてるのねえ、と感心するが、そのため、テレビを見ると一日に何本も飲料コマーシャルを見るはめになる。で、いつも腑に落ちないことがある。

CMタレントが、実際に飲んでないのに飲んだふりをしていることである。CMタレントのくちびると缶コーヒーの缶の部分がほんの少し離れているにも拘わらず、中身のコーヒーがぽたぽた下に落ちて来ない。飲んだ後なのに、くちびるにコーヒーの飲み跡らしきものがない。飲んだ後の缶に、口紅やリップグロスが付着していない。そうそうそう、どう見ても、飲んでいるという質感が伝わってこないのよ。

ところが、CMタレントの飲んだ後の顔はさわやか。いや、スッキリか。千原ジュニアサッポロビールドラフトワンを飲み、目を丸くして、味のうまさと演技のうまさの両方を演出。それがあざといのか、酷いCMだとの風評がたっている。もちろん、飲んでいないのは明らかである。WBCでMVPをもらった松坂大輔アサヒビールクリアアサヒのコマーシャルに出演。浜ちゃんと軽口たたいているが、飲む方の口は使っていない。

どうしてこんな手法を?と不思議に思っていたが、今日、TBSに出ていたはるな愛を見ていたら、スコンと答えが落ちてきた。エアだったのである。

飲料コマーシャルでは数年前から、飲むふりをしていたのだが、これがエアのはしりだったというわけだ。一社が始めれば、他社も追随し、いつの間にかCMの質というよりもエアの勝負が大切になってきたと思われる。勝負に勝った会社にファンがつくのは当然。それで、しのぎを削っていたのか。

こういう業界の、真剣ともゲームとも区別がつかない競争に興味を示すのは、芸能界でサバイバルしているタレントならさもありそうなことである。エアの良し悪しで、売り上げが違ってくるからね。大物タレントが出演するのも納得である。

というわけで、キリン缶コーヒーのファイアーは、福山雅治の起用で勝負にでた。

一方のサントリーは、ボスのレインボーマウンテンに、ハリウッドの大俳優トミー・リー・ジョンズを出演させ、地球調査というドラマ仕立てで視聴者を引きつける。しめにはかならず、宇宙人ジョーンズがボスを飲むふりをする。

あと・・・と、まだコマーシャルはあるのだが、今のところ、どこもどんぐりの背比べ程度である。理由は、どうやったら飲んだように見えるのかという飲むふりのうまさを競い合っている段階だからである。

このさい、エアらしく、缶を口から遠く離して飲むふりをしてみたらどうかと思うが、どんなものだろうか。そうすれば、冷たいコップに実際飲料を入れて、本当にそれを飲むCMという、「抑圧されたものの回帰」に対抗できるのではないかと考える。